『日本と世界のサーフィン競技人口とサーファーの収入』サーフィン業界の現状と未来
ライター: masaaki
日本と世界のサーフィン競技人口と、サーファーの収入
サーフィン競技人口
サーフィンの競技人口は、実数を把握することが難しいのですが、各協会の発表を見ると、世界では3,500万人、そのうち競技人口は350万人と言われています。日本国内を見ると200万人、そのうち競技人口は20万人とされています。年々、競技人口が増加しているサーフィン業界ですが、その実情に触れてみたいと思います。
総務省『平成23年社会生活基本調査(生活行動に関する結果)』によると、日本での各スポーツの競技人口は、サッカー600万人、バスケットボール400万人、野球800万人、ゴルフ900万人とされています。これらのメジャースポーツには及びませんが、200万人といわれるサーフィン人口は、かなり高い数字と言えるでしょう。
サーファーの収入
それではプロサーファーの収入はどうなっているのかというと、野球やサッカーのように高額な収入を得ているのに比べ、日本のプロサーファーは一部のトッププロサーファーを除くとまだ収入は低い状況にあります。海外では(特にオーストラリアやハワイなど)、高額納税者リストに載るプロサーファーも珍しくありません。
(2016WCT賞金ランキング)
世界最高峰のWCTの2016年賞金ランキングでは、ワールドチャンピオンのジョン・ジョン・フローレンスは、大会の賞金だけで年間約4,500万円の報酬を得ています。また世界のプロ、フリーの有名サーファーは、スポンサー契約やCM出演料などにより、億を超える収入があり、メジャースポーツのアスリートと同様な評価を得ています。
しかしながら、日本では国内最大規模の大会で優勝した場合の賞金は約80万円~150万円。国内トップクラスの成績をあげて賞金総額は年間2~300万円前後、女子では更にこの半額程です。スポンサー契約も、ウェットやボードなどの支援、大会参加や移動等の経費、あくまで大会で勝つためのサポート費用程となります。
日本のプロライセンスを発行しているJPSAの公認プロサーファーは、2017年4月現在で、ショートボード男子155名、女子63名、ロングボード男子131名、女子36名で、合格率はわずか2%と、難関と言われる司法試験の5%よりも低い確率。これだけ狭き門をくぐってライセンスを取得したプロサーファーでも、サーフィンだけで生活をすることはなかなか難しい現状。
しかし今後サーフィン市場は拡大して行く兆しがあります。
注目度の高まるサーフィン
サーフィン市場
このような実情からサーフィンは、生業とするには厳しいスポーツだと、ずいぶん前から言われてきました。しかし、2020年東京オリンピックの正式種目に決まったこともあり、世界的にサーフィン業界は注目を浴びてきています。また日本でもオリンピックが千葉で開催され盛り上がっている他、日本人サーファーも今世界で活躍しています。そもそもサーフィンは誰もが1度は興味を持つ魅力的なスポーツです。
国際的な市場調査ネットワーク会社 GIA 社のグローバルレポートによると、サーフィンの世界市場は 2017 年から 132 億ドル (約 1 兆 5,800 万円) 以上に拡大するだろうと予測されています。日本国内でも、明らかに競技人口が増え続けています。
1980年代、日本がバブル景気にあった第1次サーフィンブームは、好景気により個人所得が上がり、サーフィンをひとつのファッション文化として、消費が伸びました。丘サーファーという言葉も生まれ、海に行かないのに、ルーフにサーフボードを乗せている車が六本木辺りにたくさんいた時代です。
時代の流れと共に消費が落ち込み、つい最近まで数々のブランドが廃業に追い込まれました。「Beach Sound」「natural vintage」などの直営店舗を運営していたアートヴィレッヂの経営破綻は、負債総額は39億8000万円にもなります。「波乗達人」「波王」ブランドを展開していたアパレル、ブレイクスルーの破産も、業界に衝撃が走りました。
新たなブームとなりつつある今のサーフィン業界は、過去のブームと同じ形態では通用しません。既存サービスと新規の融合や、サービスIT化やグローバル化の時代に如何にしてブームを起こし定着させるかが、未来のサーフィン業界を左右するのではないでしょうか。
プロサーファーの待遇改善、サーフショップやブランドの増収、地方自治体を含めた環境整備など、様々な問題点、議題があると思います。次のブームはバブルのように無くなるものではなく、なでしこジャパンの宮間選手が言った「文化に」できるかが、日本のサーフィン業界が世界と戦えるレベルになり得るかに繋がることだと思います。
サッカープロリーグを成功させたリーダーの存在
今では野球と並ぶほどの人気スポーツで、世界の舞台にも飛び出しているサッカーですが、Jリーグができる前は、今のサーフィン同様、サッカーを仕事にしている人はほとんどいませんでした。1980年代初頭、私が高校生の頃は、サッカーをテレビで放送することなど、ほとんどなかった時代です。
1993年Jリーグが開幕すると、サーカーブームは日本中を熱狂させ、文字通り今日では「文化」となり根付いてきました。さらに全国の子どもたちなど、若年層の強化を徹底したことで、現在では世界で活躍する日本人プレイヤーが数多く生まれています。
成功の要因は様々ありますが、特筆すべきは川渕三郎チェアマンの存在でしょう。賛否両論ある人物ですが、日本では珍しいほどの強烈なリーダーシップを発揮しました。企業スポンサーの実業団チームをプロ化するわけですから、既得権益などそれぞれの企業、スポンサーの思惑が暗躍します。そんな中にあり、時には独裁者とも揶揄されるほどの剛腕を振るい、情熱をもってJリーグの発展に力を注ぎました。2016年、日本初のプロバスケットボールBリーグのチェアマンとして、それまでのNBLとbjリーグの確執をまとめ、成功を収めたことも記憶に新しいかと思います。
サーフィン業界も、今後発展を目指していくのならば、時代に合わせたリーダーが必要なのではないかと思います。プロサーファーの強化、育成、スポンサー獲得のためにエンターテイメントやプロダクツ販売においても、既存の感性、やり方ではオリンピックの一過性ブームに終わる懸念もあります。まずは選手と企業が過去の概念をうち破り、世界を目指して一丸となるべきです。
働き方改革が経済界、政治でも叫ばれる今日のビジネス界で、如何に魅力的に人を集め、そこに経済的ムーブメントを起こすことができるか、また、その恩恵をどのようにして次世代につなげていくのかなど、新たな形態のサーフィンビジネスが必要なのではないでしょうか。
今のこの時代をビジネスチャンスとして捉える、新たなリーダーがサーフィン業界に生まれてくることを期待します。
・最後に・・・サーフィンの魅力とは
今後も、新たな挑戦をしている人々や企業、業界発展に尽力している試みなどをレポートしていこうと思います。
「パタゴニア創業者の経営論」から
「私たちの会社で「社員をサーフィンに行かせよう」と言い出したのはずいぶん前からのことだ。私たちの会社では、本当に社員はいつでもサーフィンに行っていいのだ。もちろん、勤務時間中でもだ。平日の午前十一時だろうが、午後二時だろうがかまわない。いい波が来ているのに、サーフィンに出かけないほうがおかしい。 中略 結局、「社員をサーフィンに行かせよう」という精神は、私たちの会社の「フレックスタイム」と「ジョブシェアリング」の考え方を具現化したものにほかならない。この精神は、会社が従業員を信頼していていないと成立しない。社員たちもその期待に応えてくれる。お互いに信頼関係があるからこそ、この言葉が機能するのだ。」
2017年、日本政府は「勤務間インタバル制度」を導入する企業に助成金を出すことを決めました。欧米式の長期休暇制度「サバティカル休暇」を導入する企業も増えてきています。
余暇や自由な時間が増えるこのような時代の働き方に、サーフィンのビジネスチャンスもあるのではないかと思います。
まあ、ビジネスはさておき、最近の日本人サーファーの世界での活躍は頼もしい限りですね。サーフィンは楽しく自然環境の大切さと偉大さに触れることができる素晴らしいスポーツ。サーフヒーローの活躍によって憧れの職業に、又サーフィンの楽しさ、素晴らしさに触れことのできる人が今後も増えることを切に願います。
サーフィンの試合ルールはわかり易くはありません。しかしルールや選手を把握し、世界のトップツアー(WSL)や、国内のトップのツアー(JPSA)を生で観戦していただければその面白さ、トップサーファーの凄さや魅力にきっとハマると思います。サーファー、又少しでもサーフィンに興味ある方は是非一度、試合会場に足を運んでみてはいかがでしょうか?
"Catch The Funwave!" - WAVAL(ウェイバル)
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この記事を書いたライター
masaaki
サーフィンの魅力にとりつかれ海の目の前に移住し、スローライフな日々を過ごしています。海辺での生活の楽しさや、初心者にもわかりやすくサーフィンの魅力を伝えます。