あなたが知らなかったアメリカと日本のサーフマーケットの違いと働き方

ライター: 市東重明

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市東重明
『SundayKiller』speed cruise in Tlestles.CA / Photo: Instagram ShigeakiShito

日米サーフマーケットの違い

アメリカと日本のサーフィンのマーケットの違いや企業のあり方、働き方に興味があり以前からアメリカのサーフマーケットや動向をウォッチしてきた。そこで、実際にアメリカのサーフマーケットに身を置き仕事をしている方の生の声を聞く必要があった。

アメリカへ移住して20年、サーフマーケットやアパレル業界の代理店業務を実際にアメリカで仕事をしている山崎信一郎氏に今回インタビューを敢行した。彼は現在、カリフォルニア在住ながらアパレルブランド VISSLA(ヴィスラ)の日本の社長でもある。

山崎氏に聞いたアメリカのサーフマーケットで働いている生の声を元に、自分なりに考えた日米サーフマーケットの違いをお伝えしたい。

VISSLA(ヴィスラ) 山崎信一郎

変化を求められているサーフ業界

日本では90年代のサーフィンバブルが終わり、2000年代からはサーフマーケットが苦戦を強いられている。しかしここ数年、幸いにもファッション、インテリアを筆頭に西海岸ブームが訪れた。一般企業がサーフテイストを欲しがり、サーフマーケットに参入してきた。業界の勝ち組層が明らかに変化している。お客様のニーズも多様化し、従来型のサーフ事業から次のフェーズに確実にシフトしている。

今、サーフ業界自体も変化を求められているのだ。

これからサーフマーケットで働きたい方、コンペティションプロサーファーから次のフェーズを考えている若者たち、現在サーフマーケットに従事している方、または一般の社会人や個人事業主にも参考になれば幸いである。

サーフィン業界で働く理由

アメリカではプロサーファー経験者や準プロレベルのサーファがプロを諦めたらメーカーやブランドに務めることが多いという。または、学生の頃、NSSAで好成績を納めプロに転向せずに大学にいって弁護士になるというサーファーもいるという。またグラフィックが好きなサーファーはスキルを身に付け、デザイナーなどを目指したり、セールスのスキルのあるサーファーはセールス職に就くこともあるようだ。

アメリカでは下積みから勤めて業務を学びつつ、その後会社から正式にオファーされるケースが多いという。現場レベルでしっかり業務ができれば認めてもらえるということだ。経営スキルが最初からあるわけではないが、働きながら学び、慣れていくスタイルだという。

ここ数年、日本ではサーフ企業に就職する率は減ってきている。逆に、サーフ業界から他業界への人材の流出の方が多い。アメリカの働き方を参考に日本のサーフマーケットも変化を求められている時代に来ているのではないだろうか。

アメリカの雇用体系と福利厚生

日本の方が雇用保険や健康保険は優遇されている。アメリカの雇用体系は会社と個人の契約で成り立っている。社員によって報酬や福利厚生的な部分は個々の契約によって変わるという。いかにも個人を尊重したアメリカの働き方といえる。日本の企業のように、大学卒業の学歴を持っていないと雇用しないというようなものはない。また、サーフマーケット内での他ブランドや別会社へ転職するパターンも頻繁にある。自分の働きやすい環境だったり、報酬や目指すビジョンが適合する会社があれば転職する。ステップアップという考えだ。人材がマーケット内で転職することにより、個人のスキルが活かせ、そこからイノベーションが生まれたりするのではないだろうか。

市東重明

アメリカにおけるサーフマーケットでの起業や投資

日本で起業やブランドまたはショップを起こす時は、ミニマムな環境(自己資金)でスタートするのが大半のパターンだがアメリカはどうなのか?

アメリカでは個人投資家やファンドなどが資金を投資する文化が根付いている。サーフマーケットも投資の対象になっている。ここ数年日本にも増えているが、起業の際のスタートアップを助けるエンジェル投資家が以前から結構多い。通常、創業間もない起業家にはアイデアがあっても、資金調達の面で創業時に金融機関に説明できる実績がないので融資を受けづらい。このような時にエンジェル投資家に資金提供を受けることで、創業時にある程度の事業拡大の機会が広がる。

景気が良くなり資産家の余剰金が多くなるほど、こういったオファーが多いと山崎氏はいう。こういった環境は、非常に起業家にとって成功のチャンスとなる。日本の場合、アイディアはあったとしてもその事業がとてもミニマムなものになり、創業時は細々と実績を作っていかなければならい。アメリカの様な環境があるだけで、どんどん多様化した新しいブランドが誕生し、マーケットに活気が出てくる。

また、アメリカの企業では、会社間のM&A(企業の合併や買収)が頻繁にある。日本のサーフマーケットは、年々厳しい状況だが、お互いの会社のリソースを融合させ、より良いシナジー(相乗効果)を生み出す選択肢も、これからのサーフマーケットを生き抜くためには必要になってくるだろう。

顧客を引きつける独自性を

アメリカでは日本よりもいち早くインターネットベースのマーケティングにシフトしている。紙の媒体よりインターネットの媒体に予算を割く傾向が顕著だという。InstagramやFacebookなどのSNSに加え、自社のWEBサイトへの注力はサーフマッケトに限ったことではない。1人1台以上のスマートフォンやデバイスを持つ時代になり、WEBマーケティングが顧客とのコミュニケーションのツールとして成り立って来ている証拠だ。

また、メーカーから小売店への卸売りに関しても、メーカーが直接販売しダイレクトに消費者と繋がる傾向は他業種でも同じである。今後ますます加速するだろう。サーフショップなどのリアル店舗は、顧客を引きつける独自の強みを見出していかないといけない。メーカーに頼ってばかりでは先々苦労することになるのではないだろうか。

市東重明
Surf terrorist / Photo: Instagram ShigeakiShito

アメリカと比べ、日本のブランドに足りないもの

才能とカリスマ性が足りない。クリエイティブな才能は悔しいがアメリカ人の方が数段上だ。しかし、商品をより売れる様に魅力ある付加価値をつけたり、商品品質という面では日本人の方が優っていると山崎氏は語る。

言われたことをやるだけの時代から、クリエイティブな人材が活躍する時代に変わらないければいけない。日本のマーケットで必要な最大の課題は創造性(クリエイティブ)だろう。

日本のサーフマーケットでの働き方はどうか

みなさん、サーフィンやりたいからこの業界に入ったのだと思う。仕事しながらサーフィンできる環境があるに越したことはない。例えば9時−17時までの就業時間を押しつけることのないフレックスタイム就業の場合、働く人の仕事への責任感だとか自己管理能力が重要になる。しかし日本の場合、働く側にその仕事への責任感だとか自己管理能力が欠如している感じがする。どちらが良いのかは一概には言えないが自分にあった働き方や会社に合った働き方を見つけていくしかないと語る山崎氏。

確かに、働く側も仕事への成果や責任を明確にすれば、サーフィンしながら働くという理想のライフワークの環境が日本でもできるのではないだろうか。ゼロから1を生み出すクリエイティビティなどは、快適な雇用環境から生み出される産物であったりする。会議室では、思いつかなかった発想が海やビーチで突然ひらめくなんてこともありえる。ここ数年は業種によって、自宅やカフェなどで遠隔で仕事をするノマドワーカーも増えている。会社も働く側も働き方の意識改革をし、共に目指すビジョンに向け成長し、マーケットを活性化したらクリエイティブが生まれそうだ。また、これから職を探す若者たちも、そういったイノベーティブで楽しい会社を希望するのではないかと感じる。

遊び心のあるサーファーがイノベーションを

サーフィンを筆頭にアクションスポーツ業界から『働き方を変える』動きを率先してリードしてイノベーションを起こすもの面白い。アメリカと日本のサーフマーケットの違いは結論から言うと『クリエイティブ』がキーワードになってくる。この『クリエイティブ』は、人によって向き不向きも当然あるが、クリエイティブな人材をどう活躍させるかが課題だ。働き方の変革が日本のサーフマーケットにも今問われている気がする。

そして、現代社会においても、最も必要とされるのがクリエイティブな人間。サーファーは遊び心があり、何歳になっても子供頃のピュア感覚を持ち合わせている人が多い。こういう人材が、イノベーションを起こす。個々の働き方や仕事への取り組みを変えていき、世界で通用するような日本のサーフマーケットの未来を見てみたい。

"Catch The Funwave!" - WAVAL(ウェイバル)

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この記事を書いたライター

市東重明

市東重明 (しとう しげあき) 千葉県出身:ビッグカービングとエアートリックを武器にコンペティター時代を経て、現在はオリジナリティあふれるスタイルであらゆるタイプのサーフボードに乗りこなすプロサーファーとしてメディア露出も多い。楽しむためのサーフボードにフォーカスしたブランドである『LazyBoySkill』をはじめ、プライベートサーフレッスン『市東道場』やサーフショップ『LBSgallery』の運営と幅広く展開している。近年は、ペイントアートの創作、ファッションモデル、コラム執筆や講師など多岐にわたり活動の幅を広げる。また、公式ブログ『REBEL』はフォロワーが多く、その影響力は国内サーファーの中でも指折りである。
【Blog】 ak47shige.blog10
【Instagram】 instagram.com/shige_lazyboyskill/
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