『セバスチャン・ジーツ』が魅せた「新カーヴィングターン」とは?

ライター: Tsuyoshi Nakajima

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『セバスチャン・ジーツ』が魅せた「新しいカーヴィング・ターン」とは?! ワイルド・カードでWSL CTイベントを制して世界ランキング2位へ!

西オーストラリアの世界的有名なサーフ・ゲレンデ「マーガレット・リバー」において、世界最最高峰のサーフィン・エリート(ドリーム)・ツアーである「サムスン・ギャラクシー・ワールド・サーフ・リーグ(WSL)・チャンピオンシップ・ツアー(CT)」の第3戦「Drug Aware Margaret River Pro」が終了。

ケガで欠場した「オーウェン・ライト(オーストラリア)」のワイルド・カード(代替え選手)としてチャンスを得た「セバスチャン・ジーツ(ハワイ)」が、驚異的なカーヴィング・ターンを武器に勝利。今シーズンCT開幕戦から出場している「シーバス(セバスチャン・ジーツの愛称)」は、今回のマーガレット・リバーでのCT第3戦に勝利したことにより、ワイルド・カード選手としては異例となる「WSL CT Jeep Leaderboard(世界CTランキング)」2位へとジャンプアップさせた。

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CT第3戦となった会場「マーガレット・リバー」は、サンド(砂)とリーフ(岩場)のミックスされたスロープ(波の斜面)の長いパワフルなブレイクだ。ライト・レフトともに素晴らしいブレイクを魅せるが、今回はライトの方がメイン・ブレイクとなった。そんな中、優勝したシーバスは、誰よりもレールを深くドライブさせる驚異的な「カーヴィング・ターン」と、波をえぐり取るようにテールをドリフトさせる「フォアハンド・ハック」を魅せていたのが何よりも印象的だった。

新しいカーヴィング・ターンとは

5つあるWSLのジャッジ・クライテリア(審査基準)の1つに、「Innovation and Progression(技術の革新と進歩)」というクライテリアがある。近年、エアー(空中に飛び出す技)系の技術に当てはまることの多かったクライテリアだが、今大会で魅せたシーバスの新しい技術革新の進歩となる「Innovation and Progression」のターンは、フェイス(波の斜面)で魅せるベーシックな「カーヴィング・ターン」だった。

・切り立つハイリスク名セクションでシーバスが魅せた「縦のパワフル・カーヴィング・ターン
切り立つハイリスク名セクションでシーバスが魅せた「縦のパワフル・カーヴィング・ターン」

通常の「カーヴィング・ターン」は、ボトム・ターン(波の一番下の部分でのターン)から斜めにアプローチしてトップへと登り、斜面のある波のトップでのパワー・ゾーンから、逆のレールへと切り替えしながらレールを波に埋めて引きずるようにラウンド(回す)させていくトップ・ターンだ。

しかし、シーバスの魅せた新しい種類の「カーヴィング・ターン」は、ボトムから斜めにアプローチしてトップでラウンドさせるのではなく、ボトムから切り立つようなリスクの高いクリティカルなセクションへと縦にアプローチし、そこからレールを切り替えてラウンドさせるのではなく、そのまま真下に向けてレールを引きずる「縦のカーヴィング・ターン」だ。このターンを最初に試合で魅せたのは、11度のメンズ世界チャンピオンに君臨する「ケリー・スレーター(アメリカ合衆国)」だった。カーヴィングの代名詞とも言える南アフリカのエリート・サーファー「ジョーディ・スミス(南アフリカ)」がパワーを加えて進化させ、ベテラン・エリートの「ビード・ダービッジ(オーストラリア)」がよりタイトなセクションでの進化を魅せた。

・故・「アンディ・アイアンズ」を彷彿とさせるシーバスの「グラブ・レール・カーヴィング・ターン」
故・「アンディ・アイアンズ」を彷彿とさせるシーバスの「グラブ・レール・カーヴィング・ターン」

そして、今大会「ジュリアン・ウィルソン(オーストラリア)」とのFinalマッチアップで魅せたシーバスの「縦のカーヴィング・ターン」は、リスクの高い狭いタイトなセクションにおいてレールが抜けないようにしつつ、よりレールを深く水深に沈みこませてドライブさせるために、左手を水の中に埋めながら右手をボードのレールにホールドさせる「縦のグラブ・レール・カーヴィング・ターン」へと進化させた。その姿は、シーバスの故郷であるハワイ・カウアイ島出身の偉大なる世界チャンピオン「故・アンディ・アイアンズ」が生前に披露した「グラブ・レール・カーヴィング・ターン」の姿を思い起こさせるような鳥肌ものの素晴らしいターンだった。

昨シーンの暮れに、最後の最後でWSLマイナーリーグ(QS)へと降格したシーバス、そこからあきらめることなく精進を積み重ね、今シーズン巡ってきたメジャーリーグ(CT)出場のチャンスに、自分自身の努力で見事勝ち得ている。この先のCTイベントでも、アンディの遺志を受け継ぐ素晴らしいスキルと気迫を是非とも見続けていきたい。

画像出典元:
Samsung Galaxy WSL CT #3『Drug Aware Margaret River Pro』イベント・サイト

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この記事を書いたライター

Tsuyoshi Nakajima

「WSL(World Surf League) Japan Regional」ツアーにおいて、2015シーズンまでイベントの「アナウンサー/キャスター/インタビュアー/コメンテーター」などを担当。数々のワールド・アスリート・コンペティションを目の当たりにし、イベントサイトのインターネット・ライヴ中継を通してワールドツアー・アスリート・サーファーたちのヒート(試合)を解説。伊豆をホームに持つサーフィン歴は30年を超え、地元の海において「子どもたちのためのサーフィンレクリエーション」なども主催。
サーフィンのディープな本質や、ワールドツアー・イベントから国内のアマチュア・イベント、How Toなど、サーファーだけではなく、すべての方々にサーフィンを楽しんでいただけるようなニュースをお届けします。