サーフィンコンテストの歴史「サーフレースから技量を競う審査基準へ進化」
ライター: AKIKO
Kelly Slater WSL / PAT NOLAN
東京五輪2020で初めてオリンピック競技として採用されたサーフィン。サーフィンコンテストが現在の技術を評価する競技形式になる前は、どのように行われていたのか?今回はExamining the History of Surf Contestsの翻訳記事、サーフィンコンテストが現在の形式に至るまでの歴史を振り返ります。
【Index】
1.サーフィンコンテストのルーツ
2.1960年代半ばまでは「サーフレース」の要素が多かった
3.サーフィン史上初のインターフェア
4.最初は拒否された、現在の技量を競う審査基準
5.競技のファン数はサーファー人口に比べて少ない
6.コンテストはなぜなくならないのか
1.サーフィンコンテストのルーツ
コンテストのルーツは12世紀頃のハワイ諸島であると言われています。サーフィンがハワイ諸島で盛んになり、島のサーファー達が誰がよりうまく乗れるのかを証明しようとしたのがきっかけ。
このコンテスト形式は現在のものと全く別物でした。昔のハワイではコンテストは「ヘイヘイ」と呼ばれていて、「レース」を意味していました。歴史家のジョン・R・K・クラーク氏の1951年に出版された「Hawaiian Antiques」によると、昔の競技形式をこう述べています。「賭け予想が終わるとサーファー達はボードを持ってアウトにパドルします。沖で波を待ちテイクオフし、「プア」と呼ばれるブイのラインを先に通過した人が勝者となります。」
2.1960年代半ばまでは「サーフレース」の要素が多かった
このような形式の「サーフレース」は古めかしく思えるかもしれませんが、実際ごく最近まで採用されていました。1928年から1941年まで開催されていた『Pacific Coast Surf Riding Championships(パシフィック・コースト・サーフ・ライディング・チャンピオンシップ)』では、サーファーがラインナップまでパドルし、折り返して岸に戻り、最初に砂に触れた人が勝者となる形式がとられていました。
1928 Pacific Coast Surf Riding Championships
1960年代半ばまで、コンテストの審査基準には「サーフレース」の要素が含まれていて、技量やスポーツマンシップは二の次でした。しかしそれ以来、コンテストはサーフレースのフォーマットから遠ざかり、ポリネシア人の先人達が理解できないような、現在の技量を競う形式へと徐々に進化してきました。
3.サーフィン史上初のインターフェア
19世紀の記述によると、「パイエア」という名前のサーファーが「ウミ」という名前のサーファーにドロップインをしました。「ウミ」は勝利したものの岩に押し付けられ腕を怪我しました。後にハワイ島の王となった「ウミ」はサーフィン史上初の重大なインターフェアとして「パイエア」を死刑にしたといいます。
4.最初は拒否された、現在の技量を競う審査基準
95歳で亡くなったワイキキ最後のビーチボーイズと言われた故ラビット・ケカイは、50年以上にわたってコンテストに出場し、サーフィン史上、最も長いキャリアを持っていました(関連記事【ラビット・ケカイ95年の人生】ワイキキ最後のビーチボーイズ)。彼はワイキキのビーチボーイから聞いた話を話してくれました。昔のコンテストミーティングで、「速さを競うブイレースと一緒に、サーファーがどれだけうまく波に乗って岸に戻るかもジャッジしてはどうか」と提案した人がいた。しかし集められたサーファー達はこのアイデアを一斉に否定。「それはおかしい」というのが大多数の意見で「人によって乗り方は違うし、自分のスタイルもある。それをどうやってジャッジするのか」。現在の競技形式であるこの提案は「そうだね、かなり馬鹿げたアイデアだね。」 という感じで採用されませんでした。
5.競技のファン数はサーファー人口に比べて少ない
現代のサーフカルチャーでは、コンテストが好きな人と嫌いな人とはっきり分かれています。ASP、WSLなどの団体が、サーフィンを正当なスポーツとして確立しようと最善の努力をしている一方、「コンテストには興味がない」と考えるサーファーがかなりの割合で上回っています。
サッカーや野球、バスケットボールのような伝統的なスポーツでは、実際の競技者は、コンテストのファンの数より圧倒的に少ないのです。サーフィンは他のスポーツに比べ明確な定義がなく、規則性もなく、数値化できる性質というよりは、個人の表現に近い為、逆にコンテストのファン数はサーファー人口に比べて少ないのです。
6.コンテストはなぜなくならないのか
それはケリー・スレーター、ステファニー・ギルモア、ジョン・ジョン・フローレンス、カリッサ・ムーアのような、コンテストであろうがフリーサーフィンであろうが、芸術的なサーフィンを通して自己表現を行う魅力のある世界チャンピオン達が存在するからです。
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この記事を書いたライター
AKIKO
酒とサーフィンとトリップをこよなく愛する二児の母&主婦。ママになってからの方がサーフィン熱が上がってます。センスも技術もないけど波運だけはあります。
・blog: https://ryoshiyome.com/
・Instagram: @akikoba5884
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