サーフィン史上初、オーウェン・ライトが1ヒート20満点パーフェクトスコアを2回記録して優勝

ライター: Tsuyoshi Nakajima

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オーウェン・ライトの世界サーフィン史上初の歴史的勝利
Photo by WSL

パーフェクトスコアをRound 5とFinalの2つのヒートで達成する歴史的勝利

世界最高峰のメンズ・サーフィンのコンペティションツアー「Samsung Galaxy Men’s WSL(World Surf League) CT(Championship Tour)」第5戦。ウェイティング・ピリオド(開催期間)の初日から5日間のレイデー(順延)が続いた後、6日目に「It’s On!」されたイベントは、10日目のファイナルデーを迎えた。そして、8~10ftプラスのソリッドなバレル・コンディションの「クラウドブレイク」において、オーストラリアのワールド・レフトハンダーである「オーウェン・ライト(オーストラリア)」が、世界コンペティション・サーフィン史上まだ誰もなし得ていない「1ヒート20満点」という驚愕のヒート・トータル・パーフェクトスコアを、Round 5とFinalの2つのヒートで達成するという歴史的な勝利で幕を閉じた!

フィジーでのCTイベントを通して、ライトのコンペティションを分析してみると、最初のノールーザー(敗者なし)である「Round 1」のボーナス・ラウンドを逃し、負けたら最下位が決定するRound 2は、「ワイルド・カード(特別枠)」選手として出場した「アリツ・アランブルー(スペイン)」を相手にロースコアでのクロスゲームの末、僅差で辛くも勝利。そして、「エイドリアン・バッカン(オーストラリア)」との「Round 3」においても、終始クロスゲームを繰り広げて辛くも勝利してきた。

オーウェンは、CTエリート・ツアラーの中でもトップの実力を誇る選手だ。彼が上位の成績を残すときは、イベントを通して終始「オーウェン節」なオーラと勢いを放って勝ち上がってくる。しかし、このフィジーのイベントでは、それをRound 3の終わりまでまったく感じることがなく、僕の頭の中では優勝候補から外れていた。

オーウェンが、180度豹変したのがRound 5だった。いや、正確に言うとすれば、Round 4で世界チャンピオンの1人「ジョエル・パーキンソン(オーストラリア)」に受けた大きなダメージ(パーフェクト10ポイント)からだった。

2度目のボーナス・ラウンドとなる「Round 4」、パーコ(パーキンソン)にパーフェクト10ポイントをスコアされてRound 5へと放り込まれた結果、不完全燃焼が続いていたオーウェンは、いままでのフラストレーションを一気に爆発させた。同郷の「アダム・メリング(オーストラリア)」を相手に、ヒート開始早々に破壊的なブレンド・マニューバーを披露してエクセレント・スコアでスタート。すぐさまセカンド・ウェーブをキャッチしたオーウェンは、実に自身に満ちあふれたエネルギッシュかつ美しいクラシック・スタイルでのディープなスタンディング・バレルをメイクすると、インサイドのシャロー(浅いコーラル・リーフの棚)・セクションでのダブル・バレル(1つの波で2つのバレル)も見事にメイクし、最初のパーフェクト10ポイントをスコア。さらに続けてサード・ウェーブをつかんだオーウェンは、地鳴りのような凄まじいバレル・サウンドとともにライトのはるか頭上に出現する巨大なトンネルに、何のためらいもなく再び美しいクラシック・スタイルでのスタンディング・バレルのまま包み込まれた。そして、よりパワフルなフォーム・ボウル(バレルの中の1番パワーあるボウル・セクション)から吹き出る巨大で破壊的なスピッツの後、まったく変わらぬ美しいクラシックなスタンディング・スタイルのまま見事に生還すると、世界プロフェッショナル・コンペティション・サーフィン史上7人目となる「ヒート・トータル・パーフェクト20(ベスト2ウェーブのヒートで、2本の10ポイント)」ポイントを記録した。

完全に勢いを取り戻したオーウェンは、続くQuarter-finalsにおいて、Round 4でパーフェクト10ポイントの砲架を受けた世界チャンピオンのパーコを下し、Semi-finalsでは、ラウンドを重ねるごとにエンジンの回転数を上げてきた絶好調の「ジェレミー・フローレス(フランス)」とのハイレベルなバレル合戦の攻防を制し、ついにFinalへと進出。

オーウェンのFinalの相手は、イベントを通して最も際だったフォーム・アスリート・サーファーの1人「ジュリアン・ウィルソン(オーストラリア)」。ジュリアンは、Finalに登り詰めるまでに3つのパーフェクトに近い9ポイントレンジを記録してきた。しかし、完全にリミッターの外れたオーウェンに敵はいなかった。7.50ポイントからスタートさせたオーウェンは、続けてディープなハイスピード・バレルをドライビングさせてパーフェクトに近い9.60ポイントをスコアして大きくリード。

そして、終始オーウェンのハイ・ペースで迎えたヒート残り時間5分、ここからが驚愕のワールド・レコードのスタートだった。巨大なピークからドロップしたオーウェンは、凄まじいパワフル・ディープ・バレルをメイクすると、イベント3つ目のパーフェクト10ポイントをスコア。さらには、そこからヒート残り時間2分30秒を迎えたところで、長く伸びるロング・ウォールのセットにアプローチすると、信じられないような脅威のハイスピード・ロング・バレルをメイク。凄まじいロング・ウォールのドギードア(バレルがシャット・ダウンする最後の出口)から生還したオーウェンは、世界サーフィン史上初のワールド・レコードとなる1イベントに2つの「ヒート・パーフェクト・スコア20ポイント」を記録し、歴史的な勝利を収めた。

この歴史的な勝利によって、「WSLジープ・リーダー・ボード(世界ランキング)」第3までジャンプアップしてきたオーウェン。順位から言うのではなく、今回のフィジーでの歴史的な勝利がターニング・ポイントとなり、今シーズンの世界タイトル候補の筆頭に上げられるのは間違いなく「オーウェン・ライト(オーストラリア)」だろう。

次のWSL CT #6『J-Bay Open』は、世界屈指のビッグ・スロープから成るロング・ウォールのバレルが魅力の場所だ。このJ-Bayで真価を発揮するライト・ハンダーは、ケリー(スレーター)、ジョーディ(スミス)、ミック(ファニング)、ジョンジョン(フローレンス)、ジュリアン(ウィルソン)など、みな驚異的なサーファーばかりだ。バックハンダーのオーウェンが、彼らライト・ハンダーたちとどう戦っていくのか? 今からイベント開幕が非常に楽しみだ!

 

2015 Samsung Galaxy Men’s『Fiji Pro』ハイライト映像

※Samsung Galaxy Men’s WSL CT #5『Fiji Pro』Event site
http://www.worldsurfleague.com/events/2015/mct/1236/fiji-pro



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この記事を書いたライター

Tsuyoshi Nakajima

「WSL(World Surf League) Japan Regional」ツアーにおいて、2015シーズンまでイベントの「アナウンサー/キャスター/インタビュアー/コメンテーター」などを担当。数々のワールド・アスリート・コンペティションを目の当たりにし、イベントサイトのインターネット・ライヴ中継を通してワールドツアー・アスリート・サーファーたちのヒート(試合)を解説。伊豆をホームに持つサーフィン歴は30年を超え、地元の海において「子どもたちのためのサーフィンレクリエーション」なども主催。
サーフィンのディープな本質や、ワールドツアー・イベントから国内のアマチュア・イベント、How Toなど、サーファーだけではなく、すべての方々にサーフィンを楽しんでいただけるようなニュースをお届けします。