【ISA世界ジュニア銀メダル】「嬉しさより、悔しさのほうが大きかった」U16日本代表・松野太郎が語る世界2位の舞台裏と、その先の未来
ライター: WAVAL編集長

Photo by ISA / PABLO FRANCO
エルサルバドルで開催された「2026 ISA World Junior Surfing Championship」。男子U16クラスにおいて、松野太郎が堂々の銀メダルを獲得した。日本勢唯一のファイナリストとなり、昨年のペルー大会7位から飛躍的な成長を見せた彼だが、帰国から3日後に見せた表情は驚くほど淡々としていた。
決勝の20分間、アクシデントに見舞われた大会7日目、そして「世界一」との距離について——。
BLUE MONSTER監督・中西勇治氏による独占インタビューから、世界2位となった16歳のリアルな本音に迫る。
■ 目次
1. 嬉しさより悔しさ。世界2位が決まった瞬間の胸中
2. 決勝の20分間
3. 体調不良・ボード破損…どん底から掴んだ「挽回する力」
4. ファイナル前夜、緊張をほぐしたキャプテンの言葉
5. 世界一との距離と、唯一無二の武器「速さ」
6. 家族への感謝と恩返し
7. 目指すはCTとオリンピック、そして来年の「金メダル」へ
8. 独占インタビュー動画(YouTube)
1. 嬉しさより悔しさ。世界2位が決まった瞬間の胸中

Photo by BLUE MONSTER
——世界2位が決まった瞬間、どんな気持ちでしたか?
松野太郎(以下、松野):「嬉しさもありつつ、悔しさもありつつ。でも逆に、あまり何とも思わない感情もありましたね」
——嬉しさと悔しさ、どちらが強かったですか?
松野:「悔しさのほうが大きかったです。優勝できなかったという現実があるので。『できなかったんだ』という思いでした」
メダルを手にして最初に見せたいと思ったのは家族だったという。帰国してからは会う人会う人に「おめでとう」と声をかけられる日々が続いているが、大会前の自己評価は「決勝に行ける可能性は半々」と冷静に捉えていた。
2. 決勝の20分間
決勝の相手は、オーストラリアのロカナ・カレンとリオ・ルーサー・バー、そしてペルーのルッカ・バリエントス。コーチとは「最初に仕掛けて、ヒートを動かそう」と戦略を立てて臨んだ。
その言葉通り、松野は序盤に2ターンコンボからエンドセクションのリエントリーを決め、7.17のハイスコアをマークする。

Photo by ISA / PABLO JIMENEZ
——あの7.17が出たとき、このまま優勝できると思いましたか?
松野:「全然コールが聞こえなくて。そんなに出るとも思っていなかったです。実際に7点と出ても、優勝できるとは思っていないし、何とも思わなかったですね」
その後、カレンがエアを武器に7.77、8.67と高得点を重ねて抜け出すものの、松野は冷静さを保ち続け、終盤に6.00を出して2位へ浮上した。
——決勝をやり直せるとしたら、何を変えますか?
松野:「7点を出したあとの動きが、自分の中でも曖昧でした。どうすればいいかなという考えがあって。そこのミスというか、もう少しこうすればよかったというところを変えたいですね」
1本だけ乗り直せるなら最後の6点の波を選ぶという松野。「いい波だったので、もう少しできれば点数も上がったのかな」と話し、決勝で発揮できた実力は「6割、7割。いつも練習しているところを出しきれなかったのも事実」と振り返った。
3. 体調不良・ボード破損…どん底から掴んだ「挽回する力」
全日程を通じて最も過酷だったのが、大会7日目だった。
松野:「まず体調が良くなくて。前日、6日目のラウンド3の日にすごく体調が悪くて、なんとか勝って、(治療を受けて)寝ました。次の日は6時半ぐらいに起きて朝の海に入ろうとしたら、フィンボックスが壊れていて、その板はもう使えなくなって。違う板で試合に行ったんですけど、最初の8分ぐらいはトータル2点とかで、相手はもう12点ぐらい出していて」
体調不良、愛用ボードの故障、そして序盤の大差という三重苦。しかし、彼はパニックに陥ることはなかった。
松野:「あまり考えてはいなかったです。大変だな、いろんなことが起きているなと思って。一つひとつ解決して、不安を消していって、結果的に大丈夫と思えた。そのことと試合は関係ないと思って試合をしていました」
元々プレッシャーを感じにくい性格だというが、この試練を乗り越えたことで新たな手応えを得た。
松野:「大会で意外と挽回できるんだなと。自分の可能性が広がったというか、できることのラインが増えたのかなと思います」
4. ファイナル前夜、緊張をほぐしたキャプテンの言葉
常にポーカーフェイスを貫く松野だが、ファイナルデーの前夜ばかりはプレッシャーを感じていたという。そんな彼を救ったのは、日本代表チームの絆だった。
松野:「すごく緊張していたんですけど、キャプテンがそれを気にして寄り添ってくれて。みんなもそうなんですけど、俺を緩めてくれて、すごく心強かったです」
キャプテンからかけられた言葉は「いつもと変わらないよ。いつも通りやれば何の問題もないよ」。その一言で松野は、翌日の決勝も「前のラウンドと変わらない感じ」で挑むことができたという。
5. 世界一との距離と、唯一無二の武器「速さ」

Photo by ISA / JERSSON BARBOZA
——世界に通用すると感じた武器はありますか?
松野:「ターンというか、リップだったりカーブだったりを評価してもらえたのかなと思います」
自分のサーフィンを一言で表すなら「速い」と答え、勝負どころで技をメイクできる強みを自負する松野。一方で、金メダルへの課題も明確に見据えている。
——世界一になるために一番足りないものは?
松野:「できることが少ないのが一番なのかなと思っています。自分ができるものが少なくて、波から最大限の点数を出せない。練習ではできているけど試合ではできない、というのも大きいので、そこの底上げが重要かなと」
松野:「海外の選手は、一つひとつを落とさない選手が多い。自分がミスしないで相手がミスしてくれれば、こっちはすごく有利になる。その穴を埋めていければ、もっと勝ちやすくなるのかなと」
6. 家族への感謝と恩返し
周囲からは「険しい顔をしていて喋らないから、怖いと言われる」と笑う松野だが、家族の話になると真っ直ぐな感謝の言葉が溢れ出た。
松野:「去年のISAが終わってからずっと練習してきたのは、家族が一番だと思うので。生活面ももちろんそうだし、練習も、仕事じゃない時はいつも一緒にいてくれる。その支えがあったからだと思っています」
——家族に負担をかけていると感じますか?
松野:「100パーセントかけていると思う。でも、それに協力してくれていることにすごく感謝しています。結果で返すのが両親としても一番嬉しいのかなと思うので、そこで恩返しできれば一番いいなと思っています」
7. 目指すはCTとオリンピック、そして来年の「金メダル」へ

Photo by BLUE MONSTER
——オリンピックとCT(チャンピオンシップツアー)、どちらへの思いが強いですか?
松野:「どっちも同じ。オリンピックに出たいなら、CTに入って上に行く必要もある。WSLの先にオリンピックがあると思っているので」
今回、日本代表は国別団体で5位となり、惜しくも団体メダルには届かなかった。
松野:「団体は自分一人がどうこうじゃない部分があるので、練習の時から他の選手への気遣いや配慮がもっと必要なのかなと思いました。」
獲得した銀メダルは、積み重ねてきた練習の正しさを証明する「証」。彼は最後に、応援してくれる人々へ力強くメッセージを送った。
松野:「そもそも自分が世界戦に行けているのは、いつもサポートしてくださっている皆さんのおかげです。本当にありがとうございます。銀メダルは嬉しさも悔しさもあるけど、これも一つ。次につなげられるように、もっと練習していきます。これからもよろしくお願いします」
8. 【独占インタビュー動画】文字では伝えきれない素顔はYouTubeでチェック!
決勝を冷静に振り返る姿や、家族への感謝を語る際の表情など、テキストだけでは表現しきれない松野太郎の魅力は、ぜひBLUE MONSTER公式YouTube動画でご覧ください!
【大会概要】
-
大会名: 2026 Surf City El Salvador ISA World Junior Surfing Championship
-
会期: 2026年9月4日〜13日
-
会場: エルサルバドル(エル・スンザル、ラ・ボカナ)
-
男子U16結果:
-
🥇 金メダル:ロカナ・カレン(AUS)
-
🥈 銀メダル:松野太郎(JPN)
-
🥉 銅メダル:リオ・ルーサー・バー(AUS)
-
4位:ルッカ・バリエントス(PER)
-
-
国別団体結果: 1位 オーストラリア / 2位 アメリカ / 3位 ブラジル / 4位 ペルー / 5位 日本
"Catch The Funwave!" - WAVAL(ウェイバル)
「いいね!」してSNSでサーフィン情報をチェック >>
この記事を書いたライター
WAVAL編集長
神奈川県横浜市出身。 休日は湘南のサーフィンスクールでインストラクターとして活動。

