『パイプライン2連覇』プロボディボーダー鈴木彩加が見る世界
ライター: Rockwave
鈴木彩加がパイプライン2連覇!
2月25日からハワイノースショアのパイプラインで開催されている、ボディボードのワールドツアーであるAPBツアーのスペシャルイベント『Mike Stewart Pipeline Invitational』において日本のプロボディボーダー鈴木彩加が昨年に引き続き優勝し2連覇を果たした。
今回、鈴木彩加へのインタビューを通し、海水浴場でも遊べるこのボディボードというマリンスポーツの奥深さについて書いてみたいと思う。
彼女は小学生のころよりボディボードに夢中になり、地元である湘南茅ヶ崎はもとより毎年の四国合宿などでいろいろな経験を積んできた。そして日本のプロツアーで初優勝した2010年、若干15歳で史上最年少プロ転向を果たした。
パイプライン2連覇のニュースを聞いた僕は早速彼女と連絡を取った。ビデオ通話で夜のノースショアに繋いだとところ、現地は大雨で雷も凄いという。話していると、いつも通りの笑顔の中に21歳となり立派に成長したプロスポーツ選手鈴木彩加を感じる事となった。
・鈴木彩加プロ緊急インタビュー 〜鈴木彩加が見る世界とは〜
(日本〜ハワイ)2017/3/1 16:00(現地時間 2/28 21:00)
岩波:彩加、パイプライン優勝おめでとう!!まずは優勝したときの気持ちを聞かせてもらえる?
鈴木:ありがとうございます!なんか嬉しいな(笑)今回2連覇だったってことで、「え!なんか良いの?!本当に優勝なの??」って感じでしたね。
感動というより「ヤバイ!2連覇やっちゃった!どうしよー!」って感じだったらしい。パイプラインの波を貸し切り出来るという興奮でよく覚えていない昨年とは大分変わり、「普通にリップアクションして、普通に試合をしました。」と、しっかり集中して狙いすぎず自分の戦い方が出来たことで優勝の実感も大きかったようだ。
岩波:今回彩加がパイプラインに臨むに辺り、特別な準備とかはあったの?
鈴木:ワールドツアーに出場する時と毎回同じです。コンディションに合わせてサーキットの内容を少し変えています。いつものルーティーンですね。メンタルとフィジカルを整えて「よし行くぞ!」って臨む感じです。(彼女は茅ヶ崎にある林スポーツクラブのインストラクターとして働いている)
岩波:パイプライン当日の波はどんな感じだったの?
鈴木:今回は全然大きくなくて4~5ft(部屋の天井より高いくらい)で、うねりの向きがNW(北西)だったので「パイプ」でしたね。
岩波:でも小さいパイプの波って海底までが浅くて、それはそれでリスキーだったりすると思うんだけど。今回の波の難しさはなかった?
鈴木:今回はすごくテイクオフしやすかったです。私も初めてそう感じた波だった。そして走っていくと砂がついてて。
岩波:そうか。波的には春のパイプになってきていたんだね。
鈴木:そうですね。なのでチューブ以外でもアクションなども入れられる波で乗りやすかったです。
そうは言ってもそこはパイプライン。日本で頭サイズの波がビシビシ乗れる人が「あー楽しかった!」で終わる環境ではない。パワーもリスクも桁違いでCTサーファーですら大怪我をする場所である。そこで聞いてみたのが次の質問。
岩波:彩加にとって「ノースショア・パイプライン」ってどんな場所かな?
鈴木:世界中からトップ選手が集まる〜、うーん、、何ていうんだろう。。特別な、場所ですよね。いろんな人の「想い」がみなぎってて、なんか凄いパワフルな場所。だから自分も意識が高まってるときじゃないと入りたくないし、とにかくすごく神聖なところですね。波以上のものがあります。
@Pipeline (Pic by Taira Takahashi)
岩波:この数年世界ツアーを回り続けて、しっかりとした戦える実力と、明確な結果がついてきているように思うんだけど、そのあたり自分では手応えは感じてる?
鈴木:ありますね。2015年にJPBA湘南オープンで5年ぶりに優勝して、そこからポンポンとなんか自分の戦い方が分かったし、あとメンタルを鍛えたのは大きかったですね。それとフィジカルも。
そして、負けも知ったし、5年間勝てないスランプも知ってるし、勝ちも知ってるし。なんかやっとそれら全部揃って、いまは全て知ってるから怖い要素がないっていうか、今やっと勝てるように、上に上がれるようになってきたのかなって思いますね。
岩波:この5年でいろいろな経験をして冷静に見られるようになってきたんだね。
鈴木:そうですね。ある程度丸くまとまって、あとは新しい経験の一つ一つをさらに埋めていくような感じなのかもしれないです。
小学生の頃から知っている彩加が、気づけば立派なトッププロ選手になっていた。
ここまでの話でそれを強く感じて、聞いた次の質問でその気持は更に強く感じることになる。
岩波:ここまで結果を残してきている彩加の今の目標と、それを叶える道筋ってどういうもの?
鈴木:そうですね。状態を維持しつつより良く上がっていけるようにって考えてます。
岩波:じゃぁ絶対にこうなる!っていうよりも、今の延長線上で少しずつ上っていくってことなのかな?
鈴木:そうですね。もちろん行き着く目標はワールドチャンピオンなんですけど、それ自体が全てじゃなくて、その経過っていうのかな? 私が見たものだったり感じたものだったり経験したことだったりとかを伝えていきたいっていう気持ちのほうが大きいです。その延長線上に世界チャンピオンというゴールがあれば最高ですね。
この話をしながら、僕は今年のはじめに突然掛かってきた彼女の電話を思い出していた。
「岩波さん!自分の活動をもっと知ってもらうにはどうしたら良いと思いますか??」
10分位の電話だったと思うが、そのプロとしての姿勢は自社のライダーでなくてもとても立派で嬉しくなった。もちろん自分が考えつく限りのアドバイスをさせてもらった。
東京オリンピックで正式に競技として決まりメディアに取り上げられることが増えたサーフィンの影に隠れてはいるが、ISA世界戦で2年連続優勝した岡澤紫織、2年連続世界ランキング3位の大原沙莉(USオープン優勝の大原洋人の姉)、そしてこの鈴木彩加と日本には世界で活躍するトップ選手がいる。マイナースポーツがゆえ、世界ツアーを周るには相当の努力と覚悟が必要であるが、その荒波の中でもしっかりと舟を前に進めている選手がいることは心から誇りに思う。
岩波:彩加にとって「ボディボード」とは?
鈴木:ボディボードは人生です!それ以上ないです!
海水浴場で唯一出来て、夏場は海の家でのレンタルや海岸近くのコンビニでも売られるボディボード。この遊びの延長線には、鈴木彩加のような人生をボディボードから学ぶプロアスリートがいること、ボディボードを見かけた時に少しでも思い出してもらえたら嬉しいです。
そして初めての波乗りでも楽しめるボディボードという海遊び、是非あなたも体験してみて下さい!
鈴木彩加プロのインスタグラムからも彼女の世界を覗いてみて下さい→ instagram/ayakasuzukii
Pipeline Invitational 2017 Day 02 Highlight
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この記事を書いたライター
Rockwave
岩波重之:サーファーの父のもとに生まれ、25歳で湘南へ移住、ボディボードシェイプを学びながら自らのブランド「ロックウェイブ」を設立。
以後JPBA理事長とし長年に渡り選手をプロモート。最近は映像ジャンルに力を入れNSA全日本選手権のライブ配信や、AbemaTVヨコノリchの番組制作なども精力的に行なっている。ボディボードの能力を活かした水中撮影にも定評がある。
・映像について:http://rockwave.tv
・ボディボードについて: http://www.rwbbj.com
・お問合せ:iwanami@rockwave.tv